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映画「戦場のピアニスト」感想と謎解き・ホロコーストを知るために

どうもこんにちは、NITARIです。

今日は私が昔から大好きな映画「戦場のピアニスト」の感想と解説をします。

映画「戦場のピアニスト」あらすじ

「戦場のピアニスト」はロマン・ポランスキー監督により2002年に公開された戦争映画です。

出演者

ウワディスワフ・シュピルマン:ウェイディク – エイドリアン・ブロディ

ヴィルム・ホーゼンフェルト陸軍大尉 – トーマス・クレッチマン

ドロタ – エミリア・フォックス

ユーレク – ミハウ・ジェブロフスキー

ヘンリク – エド・ストッパード

父 – フランク・フィンレー

母 – モーリン・リップマン

1930年代のワルシャワから物語が始まります。

主人公のユダヤ人ウワディクはピアニストとしてラジオなどで活躍していたが、30年代後半になるにつれユダヤ人への風当たりは日増しに増していった。

1939年には第二次世界大戦が勃発。
これを機にユダヤ人にとっては情勢が好転するかと思われたが、ドイツ軍が力を増し、やがて家族は他のユダヤ人たちと同じようにゲットーに追いやられるようになる。

所持金なども制限される中、ウワディクは何とか家族を養っていた。
しかし1942年8月、ついにウワディクの家族も強制収容所へ送られることに。

それまで家族がバラバラになることはなかったが、この日、ユダヤ人ゲットー警察の知り合いの機転によってウワディクは救われ、逃げることがかなった。

逃げおおせてもそれからの生活は楽ではない。
ナチスの元で力仕事をして働くことにするが、ユダヤ人労働者たちも定期的に数人が殺されてゆく。いつ自分の番が来るかは分からない。

ウワディクは、作業中に見つけた過去の有人を頼ろうと、作業場から逃亡することに決めた。

映画「戦場のピアニスト」の疑問点

この映画を見直してから記事にするためにいろいろと調べている中で、世間的にはいくつか疑問点があるようなので、その点について分かる範囲で回答したいと思います。

「戦場のピアニスト」はどうして英語なのか?

「戦場のピアニスト」は舞台がポーランドでポーランド系ユダヤ人が主人公の映画ですが、なんで英語なの?と疑問に思った方が多いようです。

「戦場のピアニスト」だけでなく、欧州が舞台のハリウッド映画などでもよくあることですよね。「フランスが舞台なのになんで英語?」とか。

最近は比較的減って来てはいるように思えますが、昔の映画はそういったことが非常に多いです。

「戦場のピアニスト」がどうして英語作品になったのかは正確には分かりませんが、一般的にどうしてこのようなことが起きるかというと、映画のスポンサーがアメリカの会社である場合が非常に多いです。

ハリウッド映画で舞台がアメリカ以外なのに英語を話すことが非常に多いのはその為です。

では「戦場のピアニスト」の場合どうかというと、この映画を制作したのはStudioCanalスタジオカナルというフランスの制作会社です。

何でポーランドが舞台の映画がフランス制作会社で制作されたのに英語なの?と結構混乱しますよね(笑)。

それは、ポランスキー監督が当時フランスで活動をしていたからだと思います。(たぶん今も)

ロマン・ポランスキー監督の生い立ち

「戦場のピアニスト」を監督したロマン・ポランスキーは珍しい経歴を持っている人です。

元々はポーランド系ユダヤ人で、33年生まれなので幼少時にはホロコーストを経験しており、異父兄弟や母を亡くしています。本人曰はく、「自分はポーランド顔だったから逃げられた」とか。(ソース忘れましたが)

若い頃にフランスで映画監督としてデビューした後ハリウッドへ行き、いくつかの名作を生み出すんだけど、その後結婚した妻が惨殺されたり、自身が少年に性的暴行をしたと訴えられ、国外追放になり、再びフランスへ。

その後は一度もアメリカには戻っていないそうです。(「戦場のピアニスト」でアカデミー賞監督賞を受賞した時にも)

そういうわけでポランスキーはフランスを拠点に活動しているというわけ。でも近年でも英語映画はいくつも作っていて、おそらくそのどれもが出資はアメリカなのだと思います。

「戦場のピアニスト」でどうして最後にドイツ将校を助けなかったのか?

この疑問を見た時は非常に意外でした。私は全くそのような疑問を持たなかったので。

映画の流れから言うと、

シュピルマンが助かる

友人が収容所でドイツ将校に出会う

シュピルマンと友人の再会

二人が収容所跡地に赴く

字幕にて、将校は1952年に死亡との表記

となっているので、あたかもシュピルマンと友人が再会した時にはまだ将校が生きているかのように思えます。
しかし、私はこのシーンはすでに1952年以降の話で将校は死んでしまっているのだと思っていました。

明確な根拠があるわけではないですが、映画の展開からして二人の再開は終戦後かなり経ってからのことのようだし、収容所にまた足を踏み入れることができるのも、おそらく相当時間が経ってからだと思うからです。

しかし実際はこの時にはまだ将校が生きていたとしても、二人は名前も分からないので助られなかったという解釈もできますよね。

映画「戦場のピアニスト」のネタバレ感想

私はかなりホロコーストには興味があって、見れる映画は見るようにはしていますが、他のホロコースト関連の作品と比べても突出して素晴らしい出来栄えの映画です。

この映画が素晴らしい理由はいくつかありますが、いくつかの項目に分けて解説していこうと思います。

「戦場のピアニスト」の演出の魅力

最も突出して素晴らしいと思ったのは、この映画が全編を通してほとんど全てシュピルマンの目線で描かれていたことです。

どういうことかというと、この映画ではシュピルマンが登場していないシーンが後半の何シーンかを除いてほとんどないわけです。

ふつうの映画だと、主人公だけが出ずっぱりという作品はあまりありません。
大体、「一方○○は~」といったように、別の時空で行われている何かが描かれることがほとんどです。

主人公が見ているもの以外が見えない、という作品は多いようで実は大変少ないのです。

その結果、この映画は他の映画とは全く違うリアリティのある作品になりました。

特にわかりやすい点としては、「家族との別れ」の描き方があげられます。
シュピルマンが最愛の家族と分かれるシーンは、泣きを狙おうと思えば簡単なはずですが、そのような演出はなされていません。

彼らが別れを惜しむような展開もなければ、その後シュピルマンの家族がどうなったのかも全く描かれていません。

唯一、取り残されたシュピルマンが泣きながら町を歩いている描写がありますが、このシーンもただシュピルマンが悲しんでいるという事を切り取っているだけで、特にこちらに何かを投げかけるという事はないわけです。

この、完全に描く対象と感情を突き放した表現によって、私達自身も戦時中にシュピルマンと同じような戦争体験をするかのように疑似体験ができるという点が非常に有効でした。

感情移入させない

ホロコースト映画で最も重要なのは、「感情移入させない」という事だとポランスキーは言っているようにすら思います。

この映画はただただシュピルマンが頑張ってる姿を描いていますが、あまりにも淡々と描いていて、監督自身が特にシュピルマンに肩入れしているわけでもなく、「こういう事がありましたよ」というような極めて冷静な描き方をしています。

ホロコーストというのはあまりにも重大な事件です。
安っぽい感情移入など、絶対にできるわけはないのです。

「戦場のピアニスト」を見れば、この時代がどういう時代だったのかが分かるというのと同時に、シュピルマンに感情移入を促すでもないのに、そこにいるかのような疑似体験ができるという不思議な作りになっています。

「戦場のピアニスト」で使われる「裏窓」の手法

そこでポランスキーが用いた方法が、嘗てアルフレッド・ヒッチコック監督が用いた「裏窓」の手法です。

「裏窓」とは

アルフレッド・ヒッチコックが監督したミステリー作品。主人公たちは自分の部屋の中庭を挟んだ向かいの部屋で起こっている事件を窓から見て察知し、解決しようとする。
この映画ではカメラは終始主人公の部屋にのみ置かれ、「事件」が起こっている部屋を「のぞき見」しているかのように演出している。

ポランスキーが「裏窓」からインスパイアされているという話は聞いたことがありませんが、主人公の目線でのみ事件を描くというのは実は非常に合理的で、リアリティを演出するのに適していると結果的には言えます。

ただ、あの重大なワルシャワ蜂起をまさか隠れてるだけのシュピルマンの目線でしか描かないとか、ちょっとすごいですよね(笑)

ワルシャワ蜂起とは

第二次世界大戦末期の1944年にワルシャワで起こった武装蜂起。約5万人の国内軍が8月1日に一斉にドイツ軍に攻撃を仕掛けた。蜂起は9月末にまで及ぶが、ドイツ側の勝利で終わる。この戦いで亡くなったのは市民と兵士合わせて20万人以上と言われている。

「戦場のピアニスト」の描くユーモア

この映画は最初から最後まであまりにも重く、辛い出来事を描いているように見えますが、実は全体的にユーモアが散りばめられてシリアスになりすぎない作りになっています。

例えば前半での家族の様子。
迫りくる反ユダヤの波について語り合う重々しいシーンですが、何となく淡々としてとぼけた人たちのように描かれていますよね。

自分たちの財産をどうするのかという話をしている様子は、どこか緊張感がなく、この時代をどうにかやり過ごそうという様子が見て取れます。

ポランスキーから見ると人間はこのように映っているのでしょうか?

そもそも、シュピルマンが何もしないところもちょっと面白いじゃないですか。
まあ、これは事実なのだから仕方がないのですが、シュピルマンは何をしてもトチっているし、よくここまで生きてこれたなというようなトロい感じです。

この人は本当にピアノがないとダメだな…というのがよくわかりますよね。
そこがこの映画をますます魅力的にしている点だと思います。

特に、ワルシャワ蜂起がおこって逃げようとするとき、急にドイツ軍がやってきて慌てたシュピルマンが道路に寝っ転がり死んだふりをするシーンは、完全に笑いを取って来てますよね。

シリアスな映画が悪いとは言えませんが、私はこの映画に流れる淡々としたとぼけた感じというのがあまりにも好きで(まあ、たぶんポランスキーの映画が全部そうなっちゃうんだと思う。人間性?)、何度も見てしまいます。

人間そのもののがとても魅力的に描かれているんです。

「戦場のピアニスト」に用いられたショパン

では最後にメモとして、この映画で使われているショパンの名曲3曲の動画を残しておきます。

辻井伸行
夜想曲第20番 嬰ハ短調 KK. IVa-16「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」(遺作)Nocturne in C-sharp minor, Op posth

Krystian Zimerman
バラード第1番 ト短調 作品23 Ballade No. 1 in G minor, Op. 23

Daniil Trifonov
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 作品22 Andante spianato and Grande Polonaise Brillante, Op. 22 

まとめ

以上、「戦場のピアニスト」の感想と解説でした。

この映画は史実ですので、原作があります。
私は読んでいませんが、いずれ読みたいなと思ってます。

ロマン・ポランスキーのように、明らかに才能のある監督の作品を見るのは本当に楽しいですよね。まあ、「戦場のピアニスト」は楽しむような映画ではありませんけど・・・

あと、最後になりましたが主演のエイドリアン・ブロディもほんとに素晴らしかったし、ドイツ将校役トーマス・クレッチマンもクソイケメンだった。

他にも興味があってホロコースト関連の作品のレビューを書いてますのでご覧ください。

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