どうもこんにちは、NITARIです。
エディ・レッドメイン主演の映画「リリーのすべて」を見ましたので感想です。
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映画「リリーのすべて」動画配信情報
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実話映画「リリーのすべて」あらすじ
「リリーのすべて」は。2015年のエディ・レッドメイン主演の映画です。
- アイナー・ヴェイナー / リリー・エルベ : エディ・レッドメイン
- ゲルダ・ヴェイナー : アリシア・ヴィキャンデル
- ハンス・アクスギル : マティアス・スーナールツ
- ヘンリク・サンダール : ベン・ウィショー
- ウラ : アンバー・ハード
舞台はデンマークの首都コペンハーゲン。
肖像画家のゲルダは、夫で風景画家のアイナーと二人で幸せに暮らしていた。
ゲルダは肖像画を売ろうをするが、画家としての名声はアイナーには及ばない。
ある日、ゲルダの絵のモデルであるウラが来られなくなってしまったので、彼女の代わりにアイナーが足のモデルをすることになる。
ゲルダは面白がり、アイナーを女装させることに。ドレスやウィッグを見立て、美しくメイクをしてパーティーへ。
ゲルダが目を離している間にアイナーは男性に声を掛けられ、キスをしてしまう。それを見たゲルダは動揺した。
ゲルダはアイナーをモデルに絵を描くようになる。彼女の絵は認められるようになり、パリの画廊に呼ばれる。
ゲルダはアイナーと共にパリへ行くことに。
しかしその頃、すでにアイナーの心の中にはもう一人の自分「リリー」の存在があったのだった。
実話映画「リリーのすべて」の感想
すばらしい映画でしたね。
LGBTを扱った作品ですが、大変美しくて心に沁み込むような作品でとても好きです。
この映画のよかった点、そしてあまりこれはどうよ?と思った点なども含めて感想を書いていきたいと思います。
映画「リリーのすべて」のLGBTの描き方
この映画では、言うまでもない事ですがLGBTが大きなテーマになっていますよね。
エディ・レッドメイン演じるアイナーがだんだん女装に目覚め、しぐさも女性的になってゆき、女性である「リリー」としての人格を確立してゆく。
そして「実はずっと昔から自分の中にリリーがいた」というわけです。
アイナーは、性同一性障害だったのでしょうか?
もしも性同一性障害だったとしたら、それまで恋をして妻をめとりセックスまでしていて、その事実をゲルダに隠していたとしたらただ事ではない努力であるな、と思います。
とはいえ今でもそういう人はいるのかもしれないし、わかりません。
アイナーは性同一性障害ではなくて、トランスジェンダーだったのかもしれないし、わかりませんよね。
しかし問題なのは、アイナー(リリー)がどうしたかったのか。
彼女は結局女に「戻りたい」と「治りたい」と主張し、世界で初めて性転換手術をするわけです。
しかし、失敗して命を落としてしまう。
もしもアイナーが膣の移植手術をしなかったらどうなったんだろう・・・?とか、いろいろ考えてしまいますよね。
そうまでも女性でありたかったリリーの姿には胸を撃たれました。
映画「リリーのすべて」妻ゲルダの存在
とはいえ、私はこの映画における作品のすばらしさとして、リリーの描き方を特筆しようとは思いません。
この映画は確かにリリーの存在は大きいけれど、シナリオとしてリリーの存在はいたって平凡な作りだからです。(それでいいのです)
この作品が圧倒的に素晴らしいものになった理由の一つは、やはり妻ゲルダの存在が大きいといえます。
そもそも、ゲルダ目線からするとあまりにも「そりゃないっしょ!」という事の連続ですよね。
ゲルダがずっと愛していた男性がだんだん女性になってしまって、元々愛していた夫はいなくなってしまうわけだから。
描き方として秀逸だったのは、アイナーがリリーになってしまう、という描写ではなく、アイナーの中にリリーがいて、彼女がアイナーを殺してしまう、という描写にしたこと。
そして、それをもゲルダが受け入れるところですよね。
それだけ、心からゲルダがアイナーを愛していたのだという深さを思うと胸が熱くなります。
それはおそらく、ゲルダがアーティストだったから、という事もあると思います。
ゲルダはまだリリーの存在にはっきりとは気づく前に、アイナーを「女性」としてデッサンを描いています。
ゲルダはリリーをミューズとしてずっと描き続ける、そういうアーティスティックな理由があって彼女を受け入れられたのかもしれません。
ゲルダとハンスの関係性のすばらしさ
が、実は私が最も素晴らしいなと感じたのはそこでもありません。回りくどくてすいません(笑)
私がとにかく映画の表現として素晴らしいと思ったのは、ゲルダとハンスの関係性の描き方ですよ。
ハンスっていう男はとにかく最初から最後まで、一見こわもてなのにめちゃくちゃいい奴です。そんなハンスに、実はゲルダは心を惹かれているのです。
この、「ゲルダがハンスに心を惹かれている」という表現の巧さ。これはもう本当に舌を巻くレベルでした。
ゲルダはリリーの事でハンスに頼りながらも、どこか冷たくあしらっていますよね。
途中でゲルダはハンスにキスを迫りますが、この時はリリーに冷たくあしらわれたゲルダが誰かに甘えたくてハンスの元へ行った、という風にも取れます。が、実はそうではなくてハンスの事を愛し始めているのだという描写がいくつかあります。
その事に一番に気づいたのは、リリーがドレスデンに経ったあと、パリのカフェにゲルダとハンスと話していますが、彼の「僕はどうすればいい?」との言葉に「どっかに行ってよ」とあしらうシーン。
このシーンは大きなポイントで、私は結構びっくりしたのですよ。
愛するアイナーのために素晴らしい病院まで紹介してくれて尽くしてくれる男性に対してお前・・・!??って。
だけど実はこれって、すでにゲルダがハンスに甘え切っているのだという事なんですよね。ハンスの前で彼女は「女性」になっている。
その事にゲルダは気づいていますが、アイナーの事を愛しているので(もうこの「愛」は男性への愛というよりはマリア様の愛のような感じかもしれない)、その気持ちには向き合わない。
というか映画ではそこは掘り下げない。
この映画はあくまでもリリーを描くためのもの。だから過剰にゲルダとハンスの関係は描いていません。におわせる程度です。
これは非常に難しくて、もし描きすぎてしまうとわかりやすくて安っぽいものになってしまうし、せっかくの「リリー」の存在が薄れてしまうんです。
が、描かな過ぎると、これはもうゲルダにとってあまりにも救いのない、未来のない作品になってしまう。
この映画で描かれるゲルダとハンスの関係は最もバランスが良く、最も美しく、とてつもなく意味深いものでした。
この映画はリリーの映画ですが、もう見た人には分かると思うけどゲルダの物語でもあるんです。
だとすれば、「リリーを描いている」という体でゲルダをも完全に描ききらなければならない。
その点においてハンスとの関係性の描き方は100点満点以上のものがありました。
LGBT映画としての到達点
で、その点がこの「リリーのすべて」を単なるLGBT映画以上のものに仕上げた要因の一つだと思うんです。
以前から口を酸っぱくして言っていることですが、私は映画を、「メッセージを伝えるツール」として取り扱っている作品があまり好きではありません。
映画はそれ自体が芸術でありエンターテインメント。
映画を観た時に「これが正しい考え方だ」と説教されるような作品は嫌いです。
近年のハリウッド映画では、ポリティカル・コレクトネスが重要視されていて、正しい映画が賞を得ています。
ただ、あまりにもそれに拘り過ぎて、ポリコレの事ばかり考えた作品になってしまっては元も子もない私は思うんですよ。
(私は、「シェイプ・オブ・ウォーター」や「ズートピア」のその傾向を感じました)
「リリーのすべて」もまさにそういった映画だと思っていたんで、実は全然期待していませんでした。
「リリーのすべて」はもちろんLGBTをテーマとした作品ですが、見終わった後にあるのは「LGBTを虐げてはならない」という直接的な感想と共に、人間の根幹にある「愛の深さ」であったり、漠然とした、悲しくも美しい余韻が広がる抒情的な作品でもありますよね。
この余韻は、近年アカデミー賞作品賞を獲得した「ムーンライト」にも似たものを感じました。
それは、難しい社会問題を描こうとしながらも、世の中の考えを是正したいという強いメッセージよりは、人間そのもの、人間の深い愛と悲しみを描こうとした結果だと思います。
私はこうした作品こそが、ずっと後にも何度でも見たくなるし、本質的な問題も心の中に残ってゆくのだと思うんですよ。
映画「リリーのすべて」の映像美への賛否
「リリーのすべて」を読み解く上で重要なのが、この映画の映像の美しさです。
ものすごく美しい映画でしたよね。この点に異論のある方はほとんどいないと思います。
ただ、私はこの映像美に関して初めは「これは微妙だ」と思っていました。
この映画はエディ・レッドメインが主演だという事とLGBTがテーマだという事以外には何も知らずに見たのですが、10分ほど観て「これって、『英国王のスピーチ』の監督じゃね??」と気づきました。
で、調べてみたらビンゴ。
私は「英国王のスピーチ」がマジで全然面白くないクソ映画だと今でも思っていて、特にそのこれ見よがに造り込まれすぎた映像美には辟易としましたので、「これは最悪だわ。見るの辞めたい」とまで思っていました。
(この監督は前に「レ・ミゼラブル」も撮影しています。)
しかしながら、結果的には「リリーのすべて」はおおむね素晴らしい映像作品だったかなと思います。
いくつか気になる点はあるのですが、登場人物が画家であるという点がよかったですね。画家なんで、結構作り込まれてしまってもよく馴染んでいたと思います。
ゲルダの作品は実際の彼女の絵が採用されているので動かしようがないのですが、アイナーの風景画はかなり良かった。監督はかなり美術に詳しそうですね。
ゲルダの作品も非常に魅力的で(まあこれは本人の絵の模写ですが)さすが、映像をこれだけ美しく撮れるだけのことは合って、画面にアートを溶け込ませる技はかなりすごいと感じました。
ただし、画面を美しく魅せるためにアール・ヌーヴォー建築の図鑑みたいに乱用していた点はあざとかったですね。ちょっとやりすぎでした。
私はアール・ヌーヴォー建築は好きなのですが、好きだからこそウルサイ感じが少ししちゃった。
特にハンスの暮らしている家だったか?ベルギーのブリュッセルにある世界遺産「オルタ邸」が使われていました。
知らない人にはいいのかもしれないけど、知っている私にとっては「ブリュッセルかー」と思ってしまうので(「行ったよ・・・」と)、せめてパリの建物を使ってほしいなーと思います。
その他にもあざとすぎる・・・と思う映像は多々ありました(上の画像にもみられる、広角レンズの多用とか)が、全体的には描写やストーリーの魅力も相まって、美しい作品になっていたかと思います。
広角レンズは多用するとねー・・・、安っぽいミュージック・ビデオみたいになるからやめてほしいのよね。
映画「リリーのすべて」の役者たち
リリー役エディ・レッドメイン
それにしてもエディ・レッドメインの演技はすげかった。すげえええ
女性にしか見えないですもんね。
しかし素晴らしいのは、アイナーである彼のかっこよさとリリーの美しさの対比でして。
もう本当に美しいかったですよね~。
映画の持つおシャンティで鬱陶しい映像美に完全に溶け込めたのは、彼が魅力的な役者だったからに他ならないです。
ゲルダ役アリシア・ヴィキャンデル
しかしながらやはりゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルに触れないわけにはいきませんよね。
あまりにも、あまりにも魅力的過ぎます。
恥ずかしながら私は彼女の事は全く知らなかったのですが、とにかく魅力的でかわいらしい女優さんで、この映画は本当に彼女なしには絶対にありえない作品だったと思います。
また衣装がかわいいんですよね。
アール・ヌーヴォーの雰囲気にもピッタリでとにかく素敵でしたし、最後泣けた。
ハンス役マティアス・スーナールツ
とにかく私はこのハンスという役が好きでしょうがないんですけど、その理由はマティアス・スーナールツの容姿にもあるかと。かっこいい。とにかくめちゃくちゃかっこいい。
全く知らない役者でしたが、良かったですよね。
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まとめ
というわけで、まあ映像等ところどころに難のある作品ではありますが、とにかく私は大好きな映画でした。
ぜひ、いろんな人に見てもらいたい作品です。