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映画版「町田くんの世界」感想。哲学的な世界感についていけるか

どうもこんにちは、NITARIです。

今日は、石井裕也監督作品「町田くんの世界」のレビューをしたいと思います。

映画「町田くんの世界」のあらすじ

出演者

  • 町田一:細田佳央太
  • 猪原奈々:関水渚
  • 氷室雄 : 岩田剛典
  • 高嶋さくら:高畑充希
  • 栄りら:前田敦子
  • 西野亮太:太賀
  • 吉高洋平:池松壮亮
  • 吉高葵:戸田恵梨香
  • 日野:佐藤浩市
  • 町田あゆた:北村有起哉
  • 町田百香:松嶋菜々子

主人公・町田一は、勉強が苦手で運動神経もよくない、見た目もさえない地味な高校生。
だけど彼には特別な「力」があった。

それは、「とってもいい人」という事だった。

ある日、町田は美術の授業中に怪我をしてしまい、保健室へ。
そこには、滅多に学校にやってこないクラスメイトの猪原奈々がいた。

留守の先生の代わりに、いやいやながら町田を手当てをした猪原。彼女は町田に、「人が嫌いなんだ」と言い放って保健室を後にした。

町田にはその気持ちが全く理解できない。
町田はすれ違う全ての人に親切に接し、「いい人」として有名な人物だった。町田はそれから猪原の事を気に掛けるようになる。

そんなある日、町田の下駄箱にラブレターが入っていた。手紙に書いてあった通りの時間にグラウンドへ行くと、そこにいたのは同学年の男・西野。
彼は猪原に想いを寄せており、間違えて町田の下駄箱にラブレターを送ってしまったのだ。

猪原を時々話をする間柄になっていた町田は、西野が猪原に告白するシチュエーションをセッティングする。

一生懸命の西野の告白に、猪原は「町田と3人だったらデートする」という提案をしたのだったが……

映画「町田くんの世界」の感想

いやあ、とにかくひたすら妙な映画でしたね。
冒頭からかなり妙すぎて、人によってはドン引きしたっきり帰ってこれないんじゃないかとすら思ってしまいました。

料理のできない町田くんがハンバーグを作らなきゃならない。その事で頭がいっぱいな町田くんは、動物を彫刻しなければならないボードに「ハンバーグ」と彫刻。(そんなわけあるか!)

焦った町田くん、怪我をして保健室へ。そこで美少女が自分を手当てしてくれる(そんなわけあるか!)

「人が嫌い」という猪原さんを追って、めちゃくちゃ変な走り方で彼女を追い回す町田くん(そんなわけあるか!)

ハンバーグのお肉を買った帰り、川辺で風船を手放してしまう少年の為に必死で風船を追う町田くん。ギリギリのところでキャッチしたと思ったら、空中に浮いている!(そんなわけあるか!)

冒頭から起こるすべての事象に「そんなわけあるか!」という言葉がついてしまうほど意味が分からないこの映画なんですけど、不思議なことに観ているうちに誰もが町田くんを受け入れ、許し、彼らの恋路を応援したくなってしまう、そんな不思議な映画だったと思います。

映画「町田くんの世界」の哲学的なテーマ

この映画には、実際の社会にはいないだろうが、きっと一番誰もが求めているような「町田くん」が描かれています。

今までこのような「ひたすらいい人」というキャラクターは、映画の中で何度も描写されていました。

しかしながらそのほとんどどれもが、どこか偽善的であったり説教臭い部分を持っていたような気がします。
「いい人」っていうのは余程うまく描かない限り、「よかったね、良い人で」と突き放したくなるからです。

それは、実際の世界には「いい人」があまりいないからこそ、「いい人」がどうしても理想化されてしまうからという事が理由に挙げられると思います。

しかしながらこの映画の「町田くん」はなんかおかしい。とってもいい人なんだけど、なんだか妙だというところ。

もっと掘り下げてゆくのであれば、この映画が描きたかったことが「いい人であるべきだ」とか「いい人を人々が求めている」という説教臭い話なのではなくて、もっと「善意」そのもの、「善意とは何か」みたいのなことを客観的に見つめることができる作品だからだと思います。

そういった意味で、この作品は非常に哲学的な作品だったと思います。
薄っぺらい言い方をすれば、とってもシュールな作品でしたよね。

映画「町田くんの世界」で描かれるユーモア

以上に書いたように、冒頭からこの映画はちょっとやりすぎなくらい「ウケ狙い」っぽい描写が目立った始まり方をします。なので、多分この映画は入りきれない人は最後まで入りきれないのかもしれません。

石井裕也監督に対してある程度の信頼感を持ってこの映画を観始めた私ですら「スベってないか?」と思ったくらいです。

しかしながらこの映画がスベり切らず、成功した作品となった理由としては、ピリッと押さえどころをわきまえたユーモアもきっちり描かれていた所です。

冒頭ではちょっと引いた私ですが、その後にバスの中で席を譲る町田くんに対して、同級生の女の子らしき二人組が「あれ町田くんだよね。いい人すぎて一部ではキリストって呼ばれてるんだよね」とか言うんですよね。

それまでは町田くんは「ただの良い人」として描かれているのかと思ったら、その一言で「なんかヤバい人」という、一気に笑えるキャラとして確立した感があるんですよね。

たった一言なんですけど、そういう笑える感じがこの映画にはところどころに詰め込まれていて、まあ端的に言って「笑える映画」でした。

石井裕也の作品は「舟を編む」から見ており、まあそれは駄作だったんですが、その後の「僕たちの家族」スペシャルドラマの「乱反射」と、素晴らしい作品を次々に生み出している監督です。

特にドラマ「乱反射」では、重苦しいテーマを用いながら、要所要所にウィットにとんだユーモアを織り込んで来ていて、私は感服しました。

今回の「町田くんの世界」はどちらかといえばそのセンスのいい(ちょっと妙な)ユーモアをふんだんに入れて来ていたあたり、私好みの作品だったといえます。

映画の後半でアマゾンにいた父親が帰宅し、町田くんに対して何か爬虫類系の写真を見せながら、「凄く綺麗だろう。どこか母さんに似てないか?」とか言うあたりのセンスの良さにも脱帽です。

映画「町田くんの世界」で描かれる雨

そう、この映画はただ単に笑えるセリフが乱立する作品というわけでもなく、時々唸るような素晴らしいセリフもありましたよね。

私が一番すごいセリフで、この映画で最も重要な場面だな、と思ったのが、雨が降っている猪原に対して町田くんが傘を差しだすシーン。
その傘を、素直になれない猪原は避けて雨にあたってしまう。

その時の町田くんの「猪原さんは、雨が好きなの?」というセリフ。
私は、この映画の最も重要なシーンの一つだと思いました。

そして実際、この映画ではその後にも「雨」を絡めたシーンが結構多く出てきますよね。
普通の映画では、どちらかといえば雨はネガティブなものとして捉えられるが多いのですが、この映画、少なくとも「町田くんの世界」では「雨は猪原さんがすきなもの」としてポジティブに描かれていました。(実際猪原が雨を好きだったという事はないと思いますが、町田くんはそう思っていた)

雨の中、傘を差しだしたら彼女は傘を避けた。もしかして彼女は雨が好きなのかな?

そう思ってしまう町田くんの、曇りなき純粋さがこの映画の純粋さそのもののような気がします。

町田くんの眼鏡

そしてもう一つ重要だと思うものが、町田くんがいつもかけている眼鏡です。
「町田くんの世界」は、そのタイトル通り主人公の町田くんが見ている世界の物語。

それはあくまでも町田くんの眼鏡越しの世界なんですよね。

冒頭で寝起きの町田くんが眼鏡し、クリアな世界を見るところから始まるこの映画は、その後、猪原さんと一緒に眼鏡をはずして「遠近感が分からないな」と空に手をかざすシーンが描かれていたり、雑誌記者から「きみにはどんな世界が見えているの?」と言われたり、とにかく「町田くんが見ている眼鏡越しの世界」というものがところどころで意識的に描写されています。

が、最も重要なのはラストシーンで、町田くんと猪原さんがプールに落ちて二人で話をするシーン。
あのシーンでは町田くんは眼鏡をしていません。眼鏡が取れてしまっているんですよね。

眼鏡越しに見ていた町田くんのピュアな世界が、あのラストシーンでは眼鏡なしの、本当の真実を見つけたかのように描かれているのも、この映画が胸を打つ理由なのかもしれません。

まとめ

というわけで私は非常にこの映画が好きだし、正直言ってかなり泣きました。
が、多分誰にでも受け入れられる作品ではないのかもしれないな、と思います。

ちょっとこの映画みていると相米慎二監督作を思い出しましたね。全然違うかもしれないけど、もう一度相米作品を見直してみようかな、と思いました。

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