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映画「フルメタル・ジャケット」あらすじ感想と解説。メディアが与えた影響について。

どうもこんにちは、NITARIです。

昨日「プラトーン」を観たらベトナム戦争ものをいろいろ見たくなったので、「フルメタル・ジャケット」を観ましたので感想です。

「フルメタル・ジャケット」のあらすじ

出演者

  • ジェイムズ・T・デイヴィス(ジョーカー) – マシュー・モディーン
  • レナード・ローレンス – ヴィンセント・ドノフリオ
  • ハートマン軍曹演 – R・リー・アーメイ
  • エヴァンス(カウボーイ) – アーリス・ハワード
  • アニマルマザー – アダム・ボールドウィン

映画本編は2部構成となっている。

【第一部】

ベトナム戦争時、志願兵たちはキャンプで厳しい訓練を受け、その後ベトナムへ送られることとなっていた。

頭を丸刈りにされた青年たちを待ち構えていたのは、文字通りの鬼教官ハートマン。あらん限りの罵詈雑言を吐き、訓練兵たちは心も体も疲弊させてゆく。

その中に、太り気味で動きのトロいデブ・レナードがいた。
彼は何をやっても人並みにできず、もちろんハートマンに目をつけられてしまう。

そんなハートマンの面倒を見るように言われたのが、主人公のジェイムズ(ジョーカー)だった。
理知的で芯の強いジョーカーは、上官に言われた通りにレナードを一対一で指導してゆく。

そんなある日、レナードの荷物の中から禁止されていたドーナツを、ハートマンに見つかってしまう。

ブチ切れたハートマンは、次からレナードがミスした際には彼ではなくチーム全体が罰を受けることにする、と言い渡す。

全員が罰の腕立て伏せをしている中、レナードはドーナツを食べさせられるのだったが…

【第2部】

主人公ジョーカーは後方で報道部員として緩く取材をしていた。

ある時、ジョーカーの反抗的な態度に業を煮やした上官は、彼に最前線での取材を命じる。
送られた先では、訓練キャンプの同期であるカウボーイと再会した。

彼らの小隊に同行することになったジョーカーたち。
行先は、敵が後退したといわれるフエ市街地だった……

「フルメタル・ジャケット」ネタバレ感想

昨日は「プラトーン」を存分に楽しんだNITARI。
いつもの事なのですが、戦争映画の場合一本観ちゃうとはまってしまうので、次から次へと見たくなるね。

「フルメタル・ジャケット」は「プラトーン」以上に昔から激ハマりして観ていた作品なのでかなり細かいところまで覚えていましたが、改めててみるといろんな感想が湧いてきますね。

基本的にキューブリックの作品とかは大好きすぎて今までレビューを書いてこなかったのですが、そうもいっていられないのでこれからはちょっと頑張って書いてみようと思います。

ちなみに、そもそもベトナム戦争って何だったの?という基礎知識に関しては「プラトーン」の記事にてざっくり説明していますので、参考にしていただければと思います。

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「フルメタル・ジャケット」第一部訓練キャンプ編

「フルメタル・ジャケット」で最も有名なのは第一部といっても過言ではないでしょう。
とにかくインパクトがすさまじいですね。

ハートマン教官の罵詈雑言のボキャブラリーの豊富さといったら、驚きを通り越して関心してしまうレベルです。

まさに、歴代の罵詈雑言オリンピックの金銀銅が一堂に会したといっても過言ではないくらいのクリエイティビティです。
リズミカルに繰り出される魅惑的な罵倒は観るものをハートマンワールドに誘うことでしょう。

ハートマン教官の名罵倒セリフを紹介する!

ではここで、冒頭のハートマンの罵倒の中から特に素晴らしいセリフをピックアップしてみましょう。

I am hard, but I am fair!
There is no racial bigotry here!
I do not look down on niggers, kikes, wops or greasers.
Here you are all equally worthless!
俺は厳しいが公平だ!
人種差別はせん!
黒豚 ユダ豚 イタ豚を 俺は見下さん!
皆 平等に価値がない!

その直後に…

Well, there’s one thing that you won’t like, Private Snowball!
They don’t serve fried chicken and watermelon on a daily basis in my mess hall!
聞いて驚くな、スノーボール!
うちの食堂ではフライドチキンやスイカは出さんぞ!

(黒人といえばフライドチキンとスイカを食べるという人種差別的ステレオタイプがあった)

It looks to me like the best part of you ran down the crack of
your mama’s ass and ended up as a brown stain on the mattress!
I think you’ve been cheated!
パパの精液がシーツのシミになり ママの割れ目に残ったカスがお前だ!

訓練キャンプ編のストレスの描き方

訓練キャンプ編では、とにかくハートマン教官がずーーーっと怒鳴っている、正直言って話に展開などほとんどなくただただひたすら彼が主にデブに向かって怒鳴っているシーンがひたすら描かれているわけです。

映画自体は非常に淡々としており、一応ナレーションらしきものがあるので主人公はいるのだろうなということはわかりますが、一体その主人公が誰なのかはほぼわからないまま映画は進行します。

先ほど紹介した罵倒セリフを観ていただければわかると思いますが、映画を見ているこちらとしては思わず「クスっ」と笑ってしまうような気の利いた罵倒が多く、それらを全力で怒鳴り散らすハートマン教官はかなりユーモラス

それと同時に、訓練兵たちに下品な歌を歌わせたり、デブにパンツで走らせたり、映画全体にはかなり辛口のユーモアが漂います。

しかしながらこの作品をコメディだと思う人はまずいないでしょう。

戦争映画をブラックユーモアで描くコメディ作品は世の中に多くあります。
しかし、「フルメタル・ジャケット」はユーモラスでありながら、徐々に高まる緊張感と社会的ストレスを完璧に描き切っているのでコメディ作品という印象には全くなりません。

特にそれが出ているのが第一部ですよね。

ただひたすら淡々と訓練をしている中で、徐々にレナードとハートマン教官から醸し出される膿のようなものがじわじわと広がってゆきます。

すごいのは、どんなことをハートマンが訓練兵たちにかけようとも、訓練兵たちが一切顔色を変えないところです。

最も印象的なシーンは、レナードがドーナツを隠し持っていたことがハートマンにばれ、その罰としてデブ以外の全員が腕立て伏せをさせられるところ。

ここでデブに対する周りの目も決定づけられたといっても過言ではないのですが、あくまでも彼らは表情を変えないし愚痴なども言わない(というか、そういった場面は描かれない)。

ジョーカーがレナードの世話役になったあたりから、観客は彼が主人公だと気づいているのですが、そこからジョーカーがレナードに対してどのように接したらいいのか?という点についても新たな緊張感が生まれているように思えます。

徐々に壊れてゆくレナードの様子はほとんどホラー。
観ている側は彼がどうなってしまうのか皆目わからないのですが、さすが人をぞっとさせるのがうまいキューブリック。

結局レナードは教官を撃ち殺して自殺するのですが、教官を撃ち殺したり自分が自殺する描写よりも、そこに至るまでの狂気の描き方が完璧なので、とにかくその衝撃的なエンディングが際立つのです。

「フルメタル・ジャケット」第二部実践編

とはいえ、前半があまりにも高い緊張感で描かれていたことを考えると、第二部の冒頭は若干のんびりとした印象を持つかもしれません。

第一部では「狂気」をたった一つの焦点として描いてきたキューブリックですが、第二部ではより多くの要素が含まれています。

もちろん、戦場の描き方もそうですし、もっと重要なポイントとしてはメディアが描かれているという点です。

ベトナム戦争におけるメディアの役割

ベトナム戦争は一体どんな戦争だったのか?というと、歴史的に注目すべき点としては、テレビによって全世界に報道された初めての戦争である、という点が非常に重要なんですよね。

それまでの戦争は新聞かラジオでしか報道がされていなかった中で、全世界の人々が実際の戦闘を目の当たりにできるというのは今までになかったインパクトだったでしょう。

実際の映像は嘘をつかないので、いくら政府が「これは有意義な戦争なんだ」と主張しても、凄惨な様子が報道されるにしたがって社会的に疑問が増えていったようです。

ジョーカーは報道部員となりますが、前半は当たり障りのないインタビューなどしか記事にできずにストレスを募らせています。

上官は「士気の下がる記事を書いても喜ばれないだろう」ということで、死者の数など捏造しますよね。

しかし、実際は様々な報道機関がベトナム入りして真実を報道していたので、軍の発表との誤差はあったでしょう。

途中で兵士たちがテレビのインタビューを受けています。
このシーンで兵士たちは戦争に対して好意的な返答をしていますが、取材しているのは軍のカメラです。

狙撃手が伝えているもの

最期のシーンで狙撃手が実は少女だった、という衝撃的な事実が描かれています。
このエンディングに、私にはベトナム戦争そのものを観ているような気がしました。

もともとはナメてかかっていたアメリカ軍によるベトナム戦争。北部のベトコンにどんどん追い詰められてゆく感じは、まるでこの映画のクライマックスの狙撃シーンのようです。

狙撃手は一発で犠牲者を殺そうとせずいたぶって仲間を引き出そうとします。
もちろん狙撃手には殺すだけの高い技術があるのにそれをさせません。

狙撃手は粘り強く兵士たちを殺してゆくわけです。

結果的に狙撃手は少女だった。彼女は殺されてしまいますが、無垢な子供がアメリカ兵を苦しめていたと考えると、まるでベトナム戦争そのもののような気がします。

最後にジョーカーが彼女を殺しますが、これは彼らの勝ちといえるのでしょうか?

まとめ

というわけで、大好きな「フルメタル・ジャケット」を紹介してきました。

いやあ、何度見ても面白すぎる映画ですよね。
ここまでベトナム戦争を小ばかにしながらも緊張感を保てた映画はまたとないと思います。

キューブリックの映画は本当に素晴らしいですね。