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映画感想「ベニスに死す」タジオ(ビョルン)の美貌は確かに人を殺すレベルだった

どうもこんにちは、NITARIです。

先日久々に、ルキノ・ビスコンティ監督の「ベニスに死す」をみましたので、感想です。

映画「ベニスに死す」あらすじ

「ベニスに死す」は1971年に公開されたイタリア映画です。日本でも名作としてかなり有名な作品。

監督はルキノ・ビスコンティ
イタリア人監督で非常に有名な監督ですが、一番有名なのが本作だと思います。

私はこの映画を、確か高校生の時に観たと思うんだけど、その時は実はちょっと魅力が分からなくて、そのままになってました。

あらすじはとっても単純。
ドイツ人老作曲家アッシェンバッハが体調不良の静養のためにベニスを訪れた。そこで出会った、美貌の少年タージオのとりこになる。

あまりにも美貌に魅入られた自分に動揺し、いったんはベニスを離れようとするが、荷物輸送の手違いなどで出国できず、結局ホテルへ戻ることに。

その頃、ベニスでは疫病がはやっており、たくさんの人が亡くなっていたが、観光業を想とするベニスでは、その事実は完全に伏せられていた。しかし、アッシェンバッハは銀行員を問い詰め、事実を知る。

彼は何よりもまず、タージオにそのことを伝えようとするが、声をかける勇気が出ない。そうこうしているうちに、タージオが帰国することに。

結局アッシェンバッハは疫病で亡くなってしまうのだった。

映画「ベニスに死す」の感想

高校生で見た時にはどうもいま一つピンとこなかったこの作品。

改めて見てみたら、当たり前といえば当たり前なのかなーって思いました。
これは、まあ高度といえば高度ですね。

この作品が高度である理由の一つとしては、まずストーリーがめちゃくちゃシンプルっていう事です。

しかも、実際に映画の作りもかなりシンプルで、例えば延々と思い悩む表情のアッシェンバッハと美しいタージオだけを映し出すようなシーンがすごく多いわけ。

よくわかってない人には、なんか退屈に思えてしまっても仕方ないかなあと思います。

しかしながら、この映画のテーマを深く読み取ることができれば、一体この映画で何が起こっているのかっていう事が理解できるし、この映画ののんびりした様子に全くの隙もなく緊張感にあふれた作品だ、という事は容易にわかります。

映画「ベニスに死す」のテーマ

この映画は年老いた老人が美少年に恋をして破滅する、というストーリーなので、一見恋愛もののように見えますが、まずは注目すべき点として、「純粋な美」が描かれています。

実はこの映画ですごく重要だなと思うのが、アルフレッドです。回想シーンでアッシェンバッハを罵倒する人物ですね。この人はアッシェンバッハの盟友かなんかなんだろうけど、割と正体不明。

まあ、それはおいておいても、彼はアッシェンバッハに「努力によって美を創れると信じているのか?美は自然に発生するもので、努力とは関係ない」と言い放ちます。

作曲家であるアッシェンバッハはそれを否定しますが、結局その後コンサートで彼は大失敗してしまい、その時にアルフレッドの言った事を思い知らされる、という描写がありますね。

しかし、私はこの映画が描きたかったことは、何も「本当の美」という事ではないと思います。

この映画全体の「美醜」「生死」と言った対比こそが、この映画のテーマだと思うわけです。

映画「ベニスに死す」の対比

この点から映画を観ていけば、いかにすべてが計算しつくされているかが良くわかる構成になっています。

先ほども書いたように、映画そのものは非常にシンプルなものですが、アッシェンバッハの回想シーンというのが非常に重要なことをいくつも物語っています。

「生=美しいもの」と「死=忌むべきもの」の対比

この映画全体に「死」の空気が流れていることは見逃せない点です。

まずは愛娘の死
この映画の中で唯一の幸せな光景が、アッシェンバッハの家族の休日の光景でしたが、その後娘は亡くなってしまった。ここに「生」と「死」の対比が描かれています。

それからもちろんアッシェンバッハ自身が元々病にかかったため、静養でベニスに来たという点も。

いったん帰ろうとしたアッシェンバッハが駅で見た、死にゆく男。思い返せばこの映画にはかなり「死」を思わせるシーンが多く描かれているのが分かります。

美醜の対比

人が少なく荒れ果てたベニスの街の汚さもこの映画では注目すべき点です。

ベニスといえばとにかく絢爛で美しいイメージですが、この映画ではただただ汚く、今にも臭い立ちそうな様子でしか描かれていません。消毒のシーンなどもかなり強烈ですよね。

そして劇中に登場する、道化の音楽。醜い道化がタージオとアッシェンバッハの間を引き裂くように下品な音楽を奏でます。

ベニスに初めて来たときからアッシェンバッハが、時を経るごとにどんどん醜くなってゆくのも注目すべき点ですよね。

エンディング近く、アッシェンバッハが美容室で顔を白塗りにされる見た目は、あれは美しくないばかりか完全に道化。

ベンチに座った彼がタージオを見ている最後のシーンでは、前日に髪を染めた染料が汗によって彼の顔を汚してゆくわけです。見るに堪えない醜い様子と、あまりに神々しいタージオのコントラストがすさまじい。

ただ、この映画でとにかくすごいのは、ここで描かれている美や生が、醜や死を否定してはいない点

この作品は、「汚いもの(死)は嫌だよね、美しいもの(生)がいいよね」という映画ではありません。それがいいんだったら8:2の割合くらいで美しいものばっかり描けばいいんだもん(そういう映画はたくさんあるよね)。

でもこの映画は、正直言ってほとんどタージオ以外は醜い。これはもちろん、アルフレッドの言うように「美の天才が存在する」という事を象徴しているというのはある。

結局は「美醜と生死が真実である」という点を描きたかったのだと私は思います。(というか、世の中の大体は醜いし、人は死ぬのだ、というような)

結局、この映画で描かれる醜いものも、映画としてはあまりにも魂に刺さるような美しいものだと私は思います。

映画「ベニスに死す」ビョルン・アンドレセンとダーク・ボガード

あまりにもあまりにも美しかったビョルン・アンドレセン

ベニスに死すDeath in Veniceより

もう一度見たけどやっぱり美しい。胸がざわざわするくらいきれいで素敵。大変だこりゃ。

ビョルン・アンドレセンとルキノ・ビスコンティWikipediaより

なんかこうオフショットなんか見ても胸がざわざわする。

しかし今回改めてみてみたら、主演のダーク・ボガードもかなり素晴らしくて衝撃を受けました。

ダーク・ボガードDirk Bogarde: 10 essential filmsより

素敵だし、可愛いおじさま。

あまりにも素晴らしいのが、アッシェンバッハが帰ろうとするのに手違いで変えれなくて、ホテルに戻ろうとした時のあの嬉しそうなはしゃいだ感じ。100点満点ですよ。

映画「ベニスに死す」のまとめ

あまりにも最高としか言いようがなかった。ぜひ見てない人は見てほしい所ですわ。

ちなみに、この作品はドイツ人作家トマス・マン原作の作品です。
私は彼の作品の「魔の山」は読みまして、まあ完全に意味不明だったんだけど結構面白かったので、本作の小説版も読んでみようと思ってます。