本村 凌二著「教養としての世界史の読み方」を読了した。
単なる歴史入門書かと思って気軽に読み始めたのだが、あまりにも想像していた従来の入門書と様相が違い、その荒唐無稽さに度肝を抜かれたので、おすすめしたいと思う。

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本村 凌二著「教養としての世界史の読み方」

本村 凌二氏について

本村氏は、日本の古代ローマ研究の権威で歴史研究家の第一人者である。

私が本村氏のことを知ったのは、数年前にBSフジで制作された「ローマ街道物語」という、全6回シリーズを見た時だった。
このシリーズはローマ全史を「ローマ街道」を支点に制作された歴史ドキュメンタリ―で、ローマはもちろんの事ヨーロッパ全域から中東、アフリカまですべてを網羅した素晴らしい番組である。

※公式サイト↓

ローマ街道物語 - オフィシャルサイト - BSフジ
BSフジではこれまで「日本遺産物語」、「中国遺産物語」、「シルクロード物語」と、日本、そして世界の歴史・風景にスポットを当てた大型ドキュメンタリー番...

私が見たのは2015年の再放送で、しかもその時もローマに行く前提で見るために「ローマ編」である第一話しか録画しなかった。
その後初めてローマを訪れて古代史にどっぷりハマり、全6回シリーズを見ることができなかった悔しさで夜も眠れないほどだった。

しかし結果的には、あまり大きな声では言えないがその動画を某所で発見し、ダウンロードしてDVD化することに成功した。

実際に全6話見てみて、私としてはこの圧倒的なドキュメンタリ―が、一体どうしてDVD化されないのかほとほと謎である。あまり大きな声では言えないとはいえ、6巻全てDVDに焼くことができたのは本当にラッキーだった。以来、何度もこのDVDを見ている。

そのドキュメンタリーに出演されていたのが、「テルマエ・ロマエ」で一世を風靡した漫画家ヤマザキマリと、本村氏だったのである。

その後、古代ローマ史を調べるにあたり、彼の本は何冊か購入して読んだが、この人の本はとにかく読んでいて面白いしわかりやすいしちょっと笑える。

「教養としての世界史の読み方」も、数ある世界史入門書の一つとして、本村氏が書いたものでなければもしかしたら手に取らなかったかもしれない。
こんな感じの本を読むのは今回が初めてではなかったからだ。

しかし、読んでみて本当によかった。
この本は今までの歴史書の概念を完全に覆す、すさまじい書だといってもいいと思う。

歴史書としては画期的過ぎる構成

この本のすごいところは、まず何と言ってもその構成だと思う。

第一章では、「歴史とは何か」という概念と、この本がどのように構成されているかをダイジェストで読むことができる。

まずはそれがすごい。
結構のページ数を割いてダイジェスト(目次ではなくて、もっと詳細なもの)が書かれている。

これから読むんだから別にダイジェストはなくてもいいはずなのに、しかしそれを読むとこれからどんな歴史をどのような視点で読むのかというのがよくわかる。
普通の歴史書だったら必要ないかもしれないが、この本の場合は構成が珍しいので、こうやって整理してもらえると非常にわかりやすい。

それに、読み進めるうちに「これはダイジェストで言ってたなあ」という事が分かり、要するに予習の効果があって非常に覚えやすいというのもある。

歴史の流れは関係ない

しかし最もこの本ですごいところは、歴史が古い順から語られてないことだと思う。

大雑把に見れば、文明の発展から始まり、古代ローマ・ギリシャの話になってゆくので、はじめはそう荒唐無稽な感じはしないが、流れから急に現代に移行したり、いきなり産業革命がなぜ起きたのか、という話になったりする。

それは、本書が歴史を「流れ」としてとらえるのではなく、起こった出来事毎に捉えて解説しているからである。

これが、今までの私の理解をはるかに超えていた。

例えば最も私を驚かせたことは、「民族の移動」に関する章だ。
人はなぜ移動するのか?というテーマで歴史を紐解いてみると、ゲルマン人の大移動にしても、大航海時代の大規模移民にしても、人はより良い環境を求めて集団で移動する、という事が書かれている。

その文脈の中で、現代のシリア難民のことが書かれていたのである。

これが私にとっては衝撃的だった。
私にとっては「歴史」というのは過去のもので、例えば戦争にしても「過去のもの」であり、昔の生活っていうのは今に比べて洗練されていないものだと思っていたわけだ。

もちろん私も無知ではないから、今の社会情勢が非常に戦前のそれと似通っている、などのことは何となく分かるんだけど、それでもあくまでも歴史というのは「過去の事」だった。

しかしこの「民族の移動」という視点からの「シリア難民」という考え方を読んでみて、われわれの生きる「今」が実は歴史の1ページだという事を思い知らされた。

歴史に学ぶということは、過去を知り、その知識を今に活かすということですが、そのためには「今」起きていることと過去の歴史との類似に気づくことが必要です。

まさにこれである。

「人間の意識」について

そしてこの本では、「人間の意識」からの歴史までが紐解かれている。

宗教史の章では、宗教そのものがどうやって生まれたか、という事よりも先に、まずは「宗教が生まれたマインド」という点から歴史が語られている。
そこで、人類がいつ「意識」を持ったのかといえば、それは3千年前頃という風にこの本に書かれているのだが、そもそも私は「人間が意識を持った」という考え方もなかったので驚いた。

その章ではどのように宗教というものが生まれたのか、という事が書かれているが、何よりも圧倒的にすさまじいと思ったのはその章の後半部分で、「戦争は今のままの宗教ではなくならない」という部分。

彼が言うには、

戦争は勝っても負けても破壊しかもたらしません。それなのに、もう二千年以上も戦争を繰り返しているということは、今のままの宗教では、人間は戦争をやめることはできないのではないでしょうか。

という。
そしてこう続く。

現在の状況は、紀元前一〇〇〇年頃に、人間が意識を持ったことから始まっているのですから、現状を打開するためには、もう一つ、人類が新たなステップに進むことが必要なのではないか、と言いたいのです。

なんてこったである。
まさかの、人間の進化こそが本当の和平の実現には不可欠と、「歴史入門書」で語り始めたのである。

これは何?私は一体何を読んでいたの??
どんなでかい話???

まとめ

とまあ、一事が万事このような、一体自分が今どこにいて何を学んでいるのかが分からなくなる程にスペクタクルな歴史入門書ではあるのだが、それがとにかくあまりにも面白すぎて参ってしまった。

話があまりにも大きくて、それでいて説得力がすさまじいので、なんだか今我々が抱える問題の一つ一つすらも、この本を読めば解決するか、解決に向かうきっかけになるのではないかと思うほどの良著といえる。

なんだかもう自分がくよくよ悩んでいるのがバカみたいだ。

 

とにかくまずは、この本を読んでいただきたい。

もう一つ重要な点としては、この本(に限らず私が読んだ本村氏の本はどれも)非常に読みやすくて面白い。

たったの二〇〇〇円弱でこれだけ面白い本を読めるのに、読まない手はないと思う。

そのほかの本の話
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