村上春樹の「遠い太鼓」は、村上春樹が1986~89年の3年間を欧州、特にギリシャとローマを転々としながら書いたエッセイです。

今回私がローマに滞在中に読んだ感想など。

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村上春樹「遠い太鼓」感想と現在のローマ

※この文章は2017年6月から二か月ローマに滞在していた時に書いたものです。

私自身は2017年6月7日から8月9日までローマに滞在することになりました。
理由はいろいろありますけど、もうずっと昔から海外生活にあこがれていて、とりあえずそういうのって一度思い切ってやってみないとな、と思って急遽渡航したわけです。

で、日本を離れる直前に読み始めたのがこの村上春樹の「遠い太鼓」だったわけです。

村上春樹に対する私のもともとの印象

私自身は村上春樹をどう思っていたかというと、あんまり好きではなかったですね。

読んだ作品は「ノルウェイの森」「羊をめぐる冒険」、童話の「ふしぎな図書館」くらいかな。「海辺のカフカ」はしんどすぎて辞めた。

なんかこの変な口調というか癖というかナルシシズムというかがどうにもこうにも耐えられなくて、基本的にはかなり苦手なわけです。

ただ、この人の書く本というのは、我慢して読めば内容がとにかく無茶苦茶面白いんじゃないかなあと思ったのは、「羊をめぐる冒険」を読んだ時の感想ですね。

ただ、それにしてもこの人のキザったらしい言い回しはほんとしんどいものがありますね。
今回はまあ、それでもエッセイということで読み始めてみたら、この人結構面白いんだな。

この人自身は、結構笑える面白い男なんだなあということが分かりました。

ギリシャが大好きな村上氏

とにかく村上春樹はギリシャが好きみたいですね。

村上春樹はこの紀行文では、基本的にあんまり「理由」というのを書かないんで、どうしてギリシャにしたのか、ギリシャのどんなところが好きなのかとか、どうしてこの島を選んだのかとか書かない(書くこともあるけども)。

そもそも、どうして3年間も海外で過ごすことにしたのか、というのも、まあさらっとは書いてあるんですけど(「太鼓の音が聞こえた」とか意味不明なことは)、あんまりそういう、理由というところを強調しないですね。そこがいいと思います。

海外に行くのに理由なんか後付けなんだよね。行きたいと思ったら、行くのだと思います。一緒にしたら微妙ですけど、今の私もそうなので。

文章の中で、「ギリシャに住みたくて1年間ギリシャ語を学んだ」ということは書かれていたので、たぶんギリシャに関しては以前旅行で訪れていたというし、住んでみたくなったんだろうなあというのはよくわかります。

しかしローマに関しては、一度も行ったことがなかったようだし、知り合いがいる、というだけで渡航したらしいんですね。それでだいぶ後悔したと(笑)

とにかく、村上春樹の判断基準は、「仕事に差支えのない環境」というだけのことみたいですね。

本人は別に遺跡とかにも全く興味がないと断言してるし(その割に遺跡の宝庫ばっかり行ってるけど。もったいない)、とにかくゆっくり小説を書いたり、翻訳の仕事ができればいいんだとそういうことだったらしい。

そして、彼は海外にいる3年間で「ノルウェイの森」と「ダンスダンスダンス」を書きあげたそうです。

村上春樹のローマ感に爆笑したが時代は古い

村上春樹はローマに関してはかなり手こずったようですね。
とにかく生きてる人がいい加減で、何が起こっても頭にきたほうが負けだと。

実際ローマに住んでみてる私でも、それは本当にそうなんだろうなあと思いますね。まだ私なんか10日くらいしかたってないけど。頭にきたほうが負けですね。

ローマの人は感情をよく露わにしてますけど、なんかどこか滑稽というか、深刻な感じはないんですね。本人にとったら深刻なのかもしれないけど、深刻さが伝わってこないですよね(笑)。

あれってなんなんだろ、と考えてみたら、最終的にはもう「しょうがない」と「まあいいじゃん」で終わっちゃうからだとおもんですね。あと、「お互い様」かな。

なんか不手際があったり問題があったりすると、怒ったりするんだけどもう「しょうがない」んですよね、たぶん。
だから怒っても無駄なんだと思います。

この本の時代と今とで大きく変わった経済状況

とはいっても、この本が書かれたのは30年も前なんですね。

30年といえば、今と全く違うところとしてはこののち「EU(ヨーロッパ連合)」というのが発足して加盟したことでしょう。
それによって通貨は統一され、物価は他国と変わらない水準まで矯正されて、それと同時に生活水準なども一気にヨーロッパ基準に引き上げられたのだと思います。

とにかくこの政策によってEUに加盟しているヨーロッパは基本どこへ行っても物価や生活基準が同じような感じになったんだと思うんですね。

輸出入が盛んになったし、基本的には経済的には好転したはずです。
ということは、治安も向上します。

現在のローマは、スリなどの問題は据え置きにはなっていますがこの本が書かれた時の水準とは全く違うものだと思います。

EU加盟は、たぶん欧州経済的な劣等生にとっては(イタリアなど)計り知れない威力があったんだろうなあと思います。

ただし、EUに加盟したからイタリア人が今までと違って一生懸命働くようになるかというと、そういうことでもないらしいですよね。結局劣等生は劣等生であって、本質的なところは変わりません。

やがてリーマンショックが訪れて世界的不況が始まると、イタリアを含むEU五か国の劣等生が経済危機を迎えてEU優等生(ドイツやフランスとか)に助けを求めます。

で、彼らは頭文字をとってPIIGSとか言われるようになるんですけど、まあ、英語の「PIGS(豚)」をもじった言い方です。

最近でもギリシャ経済のデフォルト問題が騒がれてたけど、要は結局彼らはあんまり働かないもんで、経済的にやばいことになって、それで優等生に負担を強いるという系図になってます。

イタリアはそんな、まあちょっと経済的にはダメダメな体質の国なんです。
劣等生にはイタリア、ギリシャ、ポルトガル、スペインが含まれます。

私は、不思議だなあと思います。

ギリシャは紀元前では知の結晶といわれるほどの文明を持っていたわけだし、イタリアはその後ローマ帝国で世界を席巻したわけでしょう。

大航海時代にはポルトガルスペインが各国に植民地を作って名を馳せた。

どうしてこういう、過去に先進的だった国ばっかりが今、足を引っ張る劣等生になってしまったんだろうね?

まあ、話は経済のほうに流れてしまいましたけど、要するにこの「遠い太鼓」はイタリアのEU加盟前ですので、今はここに書かれているほどのカオスではないよ、ということです。
特に、村上氏はこのころは宿を探すのにも「ローマでは、かなり強いコネがないといい宿は探せない」といっています。

まあ当然ですが、今はインターネットがありますんでかなり質の高い部屋を日本からでも借りることができるわけですね。
EU加盟とインターネットシステムの向上によって、イタリアないし劣等生たちは水準が一気に引き上げられたんでしょう。

さて、これは偶然なんですが、村上氏がローマで初めに借りていたアパートというのが、私が今借りているアパートと非常に近くなんですね。

なので、話に出てくる場所に散歩がてら行ってみました。

村上春樹の通った市場のあった、ポンテ・ミルヴィオ

彼らが冬支度に買い出しに行ったミルヴィオ橋は私のアパートから歩いて10分ほど。

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少しまとめて生鮮食料品を買い込みたいという時には、だいたいミルヴィオ橋の青空市場に行く。ミルヴィオ橋というのは皇帝が法王にひざまずいて許しを請うたというテヴェレ河にかかる有名な古い橋だが、しょっちゅう見ていると皇帝だろうが方法だろうがそんなことはもうどうでもよくなってくる。

ミルヴィオ橋から(中略)川沿いに、ちょうど上野のアメ横みたいな感じで食料品やら衣類やらを商う店がずらっと並ぶ。

確かにミルヴィオ橋のすぐ近くで(川沿いではないけど)青空市をやってたんだけど、これのことだろうか。

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しかしこれは青空市っていうかなんかもっと全然カオスな何かだぞ。

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陳列とかがほんとやばい。

だけどこういう市場みたいなのにその後もたまに遭遇したんだけど、大体がまあこんな感じの陳列でしたね……

とりあえず野菜も奥に売っていて、見た目よりかなり広かったです。

このあたりのテヴェレ河沿いは今は結構スポーツ施設になっているみたいなので、村上春樹が行ったような市場はたぶんもうないんだと思います。

その代わりこの市場になってるんですかね……

さて、村上春樹はこの近くでをたくさん買って、新鮮なので刺身にして食べたってなってました。
私もこの部分を読む前に、市場で鮭を買って刺身にして食べました。日本人は新鮮な鮭が手に入るととりあえず刺身で食べたくなる習性があるのですね。

「遠い太鼓」と比べて今のローマの治安やスリは

村上春樹はスリのことも盛んに言っていて、確かに今でもスリはかなり多いようです。

私は電車で、私の前に乗っていた男性が少年を電車から追い出したところを目撃したんだけど、少年はその前に乗っていた女性のバックに手を入れようとしていたらしいんですね。

少年には母親もついていたんで、まあ組織的というか怖いですよね。

ただ、村上春樹の奥さんが被害に合ったような、ひったくりは今はあまりないんじゃないかな、と思います。

まず、今はイタリア人は逃げるのが面倒でひったくらない、ということも聞いたことがあります(笑)。

それから、よくも悪くもISの影響で、そこら中に(とくに観光地は)兵隊や警察が警備にあたっています。

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なので電車内でスリはできても、ひったくりはまず無理ですね。

まあだから治安は向上しているのでいいと思いますよ。

村上春樹「遠い太鼓」で使っていた言語は?

さて、最後になりますけど、村上春樹はこの本の中でいろんな人といろんな話をしているけど、いったい何語ではなしてたんだろう?

ギリシャでは、1年ならったヘタなギリシャ語って言ってたけど、村上氏ほどの人だったら1年ギリシャ語ならったらだいぶ行けんじゃないかな、と思うんですけど、ローマでは一体ぜんたい何語で話していたのか?

そればっかりはよくわからなかった。ローマの人はそんなに英語が堪能ではないので。
それにしても、村上氏は各国で簡単に知り合いを作っていて、うらやましい限りですね。

私はこの先まだまだイタリアに滞在しますけど、知り合いとかできる気がしません。

しいて言うなら市場のおじさんくらいです。
でも日本でだって働かない限り友達なんかできません。

まあ、村上春樹そのものがファンタジーってことで解釈してしまおう。

村上春樹「遠い太鼓」おすすめ度は?

旅行が好きな方は絶対に読むべきです!
村上春樹が好きでなくても楽しめると思います。

ただ、別に旅行には興味ないよっていう人には退屈かもしれないね。

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