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【クレイマー、クレイマー】感想とラストの意味を解説。

ダスティン・ホフマン&メリル・ストリープ主演のアカデミー賞作品「クレイマー、クレイマー」の、あらすじ&解説と、わかりにくいと言われているラストを解説。

「クレイマー、クレイマー」ネタバレ&結末

テッドとビリーの、奮闘の日々の前半

この映画はテッドの妻であり、ビリーの母親であるジョアンナが家を突然出てく行くところから話は始まります。

で、最初はあんまり説明がないもんだから、本っ当にジョアンナはマジで自分勝手!!!!と思います。

つーか、結局最後までそういう風に思って終わっている人も多いかもしれません!
私も初めて見たときにはそんな風に思いました。

順を追って話しましょう。

まず、ジョアンナが突然家を出てしまう。

夫のテッドは大慌てですね。
なんでかっていうと、そもそもテッドは仕事人間過ぎて家の事が全然分からないわけなんです。

息子も小さいのでどうして母が突然いなくなったのかも分からない。
テッドもうまく説明はできないし、そもそも朝ごはんひとつまともに作れない。

で、なんかぐちゃぐちゃのフレンチトーストを作ってみたりします。
まあ、全然作れないわけなんですけどね。

テッドは子供の送り迎えとかしながらも、もちろん仕事もあきらめない。
しかし子供の世話をしながら仕事をするっていうのは、当時のアメリカだとものすごく大変だったんですね。

今はどうか知りませんが、とにかく30年以上前は本当に難しかった。
日本はまあ今もこんな感じですかね。

でも、色々ありながらも父子だんだん歩み寄ってゆくわけですけど、ある日、ちょっと目を離したすきにビリーが大けがをしてしまいます。

で、テッドはビリーをかかえて全速力で病院へ。
(このシーンは本当にダスティンが子供を担いで、かなり長距離を走っています)

てんやわんやですけど、大事には至らず。

ビリーの養育権を争う後半部分

しかしながら、子どもの世話に時間を費やしていたことで、元仕事人間テッドはクビになってしまうんですね。本当に酷い話だ。

しかもそんな折に、元妻のジョアンナがやってきて、「子どもを返せ」とかいう。

キレるテッド。

そりゃあ当然だぜ!!!とかは思う。
で、そこからは養育権を争った裁判です。

しかしテッドは何しろ無職なわけで、そんな状態では養育権なんかを勝ち取れるわけがない!ということで、大慌てで再就職します。

しかしながら、裁判では負けてしまうわけ。

失意のどん底のテッド。
テッドとの別れの前日、ビリーは父と離れ離れになることで涙します。
もうここはほんとに泣けるやつです。

で、母親が迎えに来る当日、今はすっかり上手になったフレンチトーストを二人で作って、母親が来るのを待っています。

しかしジョアンナは、「テッドと二人で話したい」と言い、マンションのロビーにテッドを呼び出します。

彼女が涙ながらに言うには、「ビリーの家はここよ」。

ということでジョアンナが息子を諦める、という話です。

「クレイマー、クレイマー」のラストの意味と解釈

私は昔からこの映画が好きで何度も観ているので、この映画のラストについては特に疑問もなく飲み込んでいたのですが、この記事を書くにあたって調べていると、結構このラストに納得ができない人が多いようです。

まずは、この映画が最終的に二人が離婚してしまうというのが分からないという意見。

これは、おそらく「子供のためにはやっぱり離婚はしないでハッピーに暮らす映画のはずだ」という期待がこの映画に対してあった場合、「え?これって結局離婚しちゃうの?」という風になっとくできないケースがあるようです。

結論としては、この映画はもともと夫婦が離婚するのか離婚しないのか、という映画ではありませんので、最終的には当然離婚します。
もう、ジョアンナの気持ちは離れてしまっているわけです。

ではもう一つ、なんでジョアンナがビリーの事を諦めたのか?という点です。

そもそも、映画内でも描かれていましたが、親権問題の場合はもちろん子供の意思よりも、とにかく「自分が子供を引き取りたい」という気持ちで争われることが多いですよね。

この映画でも、最初はノイローゼになってしまったジョアンナが、「離婚することで自分を取り戻して自信を回復したので、やはり自分で子供を引き取りたい」と思ったことで裁判に踏み切ることになったわけで。

それで裁判ではジョアンナが勝訴し、子供を引き取ることになりますが、いざジョアンナの元へビリーが去ってしまうときになって、ジョアンナは「ビリーの気持ちを考えるとこの家にいるべきだ」と思いなおすわけです。

ジョアンナは自分の命の次に子供を愛しているので、この決断は断腸の思いだったはずですが、テッドの、子供に対して真摯な様子やビリーの様子を見て、テッドやこの家とビリーを引き離しちゃいけないと思ったのかなと思います。(ここは私の勝手な解釈ですが)

ビリーの事を想っているからこそ、彼にとって一番いいのはこの家にいることだと思ったんだよね。

ジョアンナは本当に、ビリーの事を愛していたんだなあというラストですよね。

だったら子供のためにもよりを戻せばいいじゃん!という考え方もあるかもしれませんが、親にも人権があるわけだし、子供のために無理して結婚している状況は必ずしも子供のためにならない、というのが一般的な考え方です。

しかしながら、最終的にこのジョアンナの苦渋の決断によって、ジョアンナとテッドの関係は元には戻らないけども、かなり良好な関係をもってこの問題を解決したわけなので、これは本当に子どものためにも二人のためにもよかったなあと思わずにはいられない、素晴らしいラストですよね。

「クレイマー、クレイマー」評価と考察

昔と今の、この映画を観た印象の決定的な違い

この父子の奮闘ぶりはとにかく感動的で、温かい気持ちにもなるし手に汗握るものだと、私も小さい頃から感じてきました。

一方で、私の中ではこの映画のジョアンナは「悪役」の立場でした。そういう風に感じている方はそれなりに多いと思います。

どんな事情があろうとも、旦那はともかく子供を捨ててはいけない、と思っていました。今でも、子供を捨てるという決断には考えされられるものがあります。

この映画は「女性の自立」に関して描いている

近頃の日本の社会問題の最も大きなテーマの一つが「少子化」にあると思います。私もこのテーマに関しては関心があり、いくつか本を読んでみました。

その中に、古市憲寿氏の「保育園義務教育化」という本があります。名著です。

この本は「はじめに」で、「お母さんが人間だっていつ気づいた?」と言っています。私はこの導入部分にドキッとさせられました

 冷静に考えればわかることだが、「自分の親」、特に「お母さん」となると、その人も人間であることを忘れてしまいがちだ。
 同じ人間であるはずの母親も、「お母さん」という名前が与えられた途端に、何を頼んでも聴いてくれる超人のような存在だと錯覚されてしまう。(中略)

古市氏は続けます。

 日本には今、二つの大きな社会問題がある。少子化と労働力不足だ。
 そんな時代に子供を産んで(少子化解消の貢献)、なおかつ働きたいと思ってくれる(労働力不足に貢献)お母さんは、本来なら国が表彰してもいいくらいの存在だ。
 それなのに現実に起きれいることは完全に真逆。(中略)もう完全に異常だとしか思えない。

 本文より引用

「クレイマー、クレイマー」は、「妻の家出」から唐突に話がスタートしています。これは単に、観客を夫であるテッドの目線に据え置いて話を進めているからです。

それが証拠に、テッドが息子を置いて出て行った妻に対して嫌悪感を抱くのと同じように、観客である私たちも彼女を嫌悪します。

今見たら古い、と思いたいところですが

一方で、この映画では「子を持ちながら仕事をする難しさ」に対する社会批判が含まれています。

この仕事人間のテッドが、妻が出て行った途端にプライベートに時間を費やすことになって、仕事に支障をきたすようになります。この、仕事に支障をきたし方が、今の日本の社会にもすごく似ていて、改めてびっくりしました。

テッドはどんどん立場が悪くなって、しまいにはクビになってしまうという。
今のアメリカだったらそんなことはないだろうし、ドイツや北欧あたりだったらたぶん一笑に付されてしまう展開。

それはそのはず。だってこの映画、制作されたのは1979年なんだもん。

男女平等に関しては……まあ、今も結構微妙な感じになりましたけどね……
トランプとか出てきてるしね……

妻がどういう思いでいたのかは裁判で明かされる

この映画のねらいは、とにかくテッド目線ですべてを描いていて、後半の裁判シーンで初めて妻に本音を語らせることで、社会に対しての批判を描写する、というところ。

ジョアンナが仕事をしたかったのに辞めなければならなかった事とか、ジョアンナにとっての結婚が何だったのかということが描かれます。

これって本当に今の日本でも議論されているようなことなんだけど(議論された結果なんの解決もされてないしな)、今見ると本当に先進的でびっくりするわ。

かなり社会的なメッセージが込められているんですね。
若い頃観たときには全然気づかなかった。ダメですね。

日本ではこの映画の評価は未だに「子供のために頑張る父親の絆の映画」との意見が一般的なように思えます。

この映画は、リベラルな感性を持っている人であればだれもがジョアンナの事を責められない作りになっているのに、たぶん日本ではいまだに、「ジョアンナは悪」ってことに収まってる気がするわ。

つまり、この映画は男女平等女性の自立子育てをする親に対してどのような考えを持っているのかが分かる、のようなものなのかも知れないね。

「クレイマー、クレイマー」のオススメ度は?

この映画、ほんっとうにオススメ中のオススメです。

だけどこの映画を観るときに気を付けてほしいのが、息子を捨てるってことはジョアンナは悪だってはじめに思わないでほしいです。

人は追い詰められたときに、見境のない行動しかできないときがあるんです。
問題は、「どうしてそうなったのか」ということです。

心を開いてみてもらえれば、今の日本にも通じる重要なメッセージを受け取ることが出来ると思います。