ネタバレ・現代史から考える「進撃の巨人」を読むために絶対必要な2つの基礎知識

2017-09-25漫画ファンタジー, 戦争

「進撃の巨人 22巻」皆さんはもう読まれましたか??

今回もこれでもかというくらい、惜しみなく新情報をぶっこんで来やがりましたね。
こんなに惜しみなく情報をダダ漏らししてくれる本作ですが、読んでも読んでも一向に先の事が分からないっていうのも凄い話だ。

さて、そんな「進撃の巨人」ですが、この作品は別に知らなくても楽しめるけど、知っていればもっと楽しめる基礎知識が多く存在します。

今回はその中から、特に「これだ!」と思った2点を焦点に解説していきたいと思います。

今回の話には、進撃の巨人のネタバレが含まれますので、最新22巻まで読んだ方のみご覧いただくようお願いします。

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進撃の巨人は現代史にも通じる重要なメッセージを孕んでいる

1、エレンの掲げる「自由」と、「特攻」

まあ、物々しくこんな記事を書き始めたはいいんですけど、まあまあの精度で私もよく分かってないというのが現状です(どーん)。
進撃の巨人難しすぎるんだよ(笑)

だけどいろいろと気になるところはありますね。

そもそもこの進撃の巨人、単なるエンタメ作品に見えながらかなり社会風刺的要素を盛り込んだ作品です。

まずはエレンが追い求めている「自由」というもの。これはこの作品を読み解く上で非常に重要なキーワードになります。

もっとも初期の段階で、この「自由」という言葉の使い方が印象的だったのが「第4巻 原初的欲求」の一説です。以下引用します。

オレ達は皆 生まれたときから自由だ
それを拒む者がどれだけ強くても 関係ない
炎の水でも 氷の大地でも 何でもいい
それを見た者は この世界で一番の 自由を手に入れた者だ

戦え!

そのためなら命なんか 惜しくない
どれだけ世界が恐ろしくても 関係ない
どれだけ世界が残酷でも 関係ない

戦え!戦え!戦え!!

 

直前の、アルミンからの問い、

「どうしてエレンは、外の世界に行きたいと思ったの?」
「どうしてだって?そんなの決まってんだろ……
オレが!! この世に生まれたからだ!」

ここから続くこの「原初的欲求」を読んで、単純なNITARIは圧倒的に共鳴し、リヴァイ兵士長など爆発的に魅力的なキャラクターがいながらも他の追随を許すことなく一心不乱にエレンを崇拝するに至った経緯があります。

でもこの言葉にはすごく危うい部分も残されていて、それは自由を追い求めるために自らを犠牲にして戦い続ける、というところです。

猛烈に好きなシーンですけど、果たしてこれは本当に正しいのだろうか?と長年考えてきました。
なぜかというと、命を省みない戦いの行きつく先は「特攻」なのではないかと思ったからです。先の戦争にみられた、まさにあの「特攻」ですね。

しかしながら、ここ数巻に至っては、ついにこのエレンの「自由感」が覆されつつあります。レイス家の話が出てきたころから分かってくることですが、どうやら一概に巨人は悪い奴だとは言えないらしい、ということ。

そうなってくると、「巨人」=「自由を奪うもの」という考え方で生きてきたエレンの存在理由事態が覆るようなものなんですね。

これは別にこの「巨人」の世界だけの話ではないんですね。
世の中にある戦争、というものが実は必ずそういう性質を含んでいるのだ、ということは絶対に忘れてはならないのです。

「特攻」についての諌山氏の考え方

さて、先ほど出てきた「特攻」という言葉ですけど、これは進撃の巨人の本編でも実際に扱われた言葉です。

「第80話 名も無き兵士」で、エルヴィンがもうほとんど生きる術を失った兵士たちを鼓舞して、獣の巨人に「特攻」を仕掛ける。その時に獣の巨人は言います。

しまいには壁の中の奴ら全員 年寄りから子供まで特攻させられるんだろうな…
どうせ誇り高き死がどうとか言い出すぜ
…発想が貧困でワンパターンな奴らのことだ

実際エルヴィンのスピーチは立派なもので、かなりの人が「特攻」を有意義なもののように感じるかも知れません。なんで私は、このエルヴィンのスピーチは危ういなあ、と思ったわけです。

ここまでで物語が終わってしまっていたら、「特攻」って正義だよね、みたいな描き方になってるんですが、その後の展開では助けられたはずのエルヴィンは助けられることなく、代わりにアルミンが助かる

そのてんやわんやの時にフロックが言ったことも非常に重要で、

でも…それじゃ生ぬるいと思った…
この人には まだ 地獄が必要なんじゃないかって…

…そして わかったんだ

巨人を滅ぼすことができるのは 悪魔だ!!
悪魔を再び蘇らせる… それが俺の使命だったんだ!!

このセリフがあることで、エルヴィンが「特攻」という許されない行為をしてまでも勝利しようとしたことが強調されています。

「特攻」がいかに極悪非道かということをきちんと落とし込んでいるわけですね。
ここは実は、前半でエレンが言った「自由のために戦え!」っていうところともつながっています。

そもそも、今の日本の社会で置き換えたとしたら、調査兵団が掲げている「心臓を捧げよ!」という文言自体が実は相当やばいことを言っているわけ。

だけど諌山創はそれを分かったうえでこの物語の基盤にしてきた、というところは必ず注目しなければならないところです。

しかし、そのような経緯が後から出てきたにしても、エレン個人が自分から自由のために命を捨てても戦う、と宣言した「原初的欲求」のすばらしさは絶対に否定できないものだと確信しています。

2、最も分かりやすいメタファーとしてのホロコースト(ユダヤ人迫害)

さて、もう一つ、これは別にいうべきことでもないかな、というくらい分かりやすいメタファーになっているのが、21巻で登場した「壁の中に閉じ込められたエルディア人」の存在です。

エルディア人は壁の中に押し込められ、「腕章」を付けさせられて生活しています。

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本編より引用

これは、第2次世界大戦前~中のユダヤ人たちをモチーフにしたものです。

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ワルシャワ・ゲットーWarsaw Ghetto写真解説;鳥飼行博研究室

腕章のデザインまでそっくりです。

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本編より引用

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同サイトより

ここでいう「壁」という存在も、ユダヤ人迫害の長い歴史の中で作られてきた「ゲットー(ユダヤ人居住地区)」がまんまモデルになっています。
近年で最も有名なのは、もちろん第2次世界大戦の頃のことです。
普通に暮らしていたユダヤ人たちはある日突然捉えられ、壁で取り囲まれた「ゲットー」の中の生活を余儀なくされます。

この「ゲットー」ですが、かなり狭い地区に大勢のユダヤ人たちが押し込められたことで、病気や飢えなどが頻発して、それだけでかなりの人が亡くなっています。

「進撃の巨人」で扱われているエルディア人は、多分ユダヤ人を表していて、マーレ人はキリスト教かイスラム教、というように見える作りになっています。

実際に長い歴史の中でもともとはユダヤ教が強かったものが、その後キリスト教が生まれたことで迫害の歴史が始まるという流れは似てはいますが、そもそもエルディアはマーレをかつて滅ぼした歴史があることにも注目すべきです。

つまり、エルディア=ユダヤ人と見たときにも、必ずしもエレン達エルディア人たちこそが正義という風にはなっていないのです。

結局戦いにはマーレが勝って、今はエルディア人は迫害される立場になってますけどね。

だから、どこまでエルディア=ユダヤ人とみるべきかは今の段階では何とも言えないところではあります。

ちなみに、近代史に合わせて考えるのであれば、ユダヤ人は大戦での迫害ののちに今の「イスラエル」をユダヤ人の国と定め(定めたのは国際的な機関ですが)、一応離散の歴史に形の上では幕を閉じます。

しかしながら元々さまざまな宗教の入り混じった聖地エルサレムを擁するかの地には、既にたくさんの人々が暮らしていました。その人々は住む家を追われ、難民として今でもパレスチナや近隣諸国に暮らしています。

そして、「ガザ地区」はパレスチナ本土から離れた区域に位置し、「ガザ・ゲットー」と呼ばれて高い壁て覆われているパレスチナ自治区で、失業率が40%という劣悪な環境で人々は暮らしています。

虐げているのはイスラエル人。
かつては虐げられる側だったユダヤ人が今度は虐げる側として空爆を行ったりしているわけです。

この攻防戦は、まるでエルディアとマーレの戦いに似ていますよね。

ccp-ngo.jp

もっと気づかないところでいろいろなメッセージがあるのかも

さて、近代史と「進撃の巨人」を絡めて書いてきましたが、実際はどこまで諌山創が考えて描いているのかは不明です。

今回はこの2点を焦点にしましたけど、「現代史と進撃の巨人」は、実際は多分それだけで一冊本が書けるくらいいろいろあるんだと思います。

そのあたりも意識して探していけたらなと思ってます。

 

そもそも諌山氏自身は、「進撃の巨人は北欧神話を呼んでれば大体ネタバレ」と言っていて、私自身は全然北欧神話の教養がないのでこのように解釈していますが、詳しい人に取ったらもっと別の読み方ができるのかも知れません。

それにしてもくどくど書きましたけど、本当に進撃の巨人はサイコーだよね、ということでこのダラ長い記事を閉めたいと思います。

ありがとうございました。

 

↓ユダヤ人ゲットーや迫害に関して知りたい方はこの映画をどうぞ

↓イスラエル&パレスチナ問題を知りたい方はこの映画をどうぞ

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